多くの編集プロダクションや出版社が東京近郊に集中するなか、地方在住ライターはどうやって案件を獲得し、どのように収入を安定させているのでしょうか?
そこで、一都三県以外に住むフリーライターを対象にアンケートを実施。主なクライアントの所在地から案件獲得の方法、地方在住ならではのリアルな本音を徹底調査しました。地方で生き抜くライターたちの仕事術を公開します。
回答者について
今回は、回答者の在住エリアを、A 首都圏隣接エリア(茨城・栃木・群馬・山梨辺り)、B 地方都市エリア(関西・名古屋・札幌・福岡・仙台など政令指定都市がある都道府県)、C その他地方エリア(A、Bエリアの方)の3つに分類し、合計38人の回答を得ました。
母数が少ないため、地方在住ライターの平均的な実情というよりは「こういう仕事をしている」というデータとして参考になれば幸いです。
約8割が首都圏近郊と取引すると回答
地方在住ライターは、一体どのエリアのクライアントと主に仕事をしているのでしょうか?
メインクライアントの所在地を尋ねたところ、「ほぼ首都圏近郊(東京含む)」が44.7%、「地元半分・首都圏近郊半分」が34.2%、「ほぼ地元」が18.4%という結果に。各選択肢を合算すると、約8割が首都圏近郊の企業、約5割が地元企業、それぞれ関係性を持っていることが分かります。
注目したいのは、「約5割が地元企業と関わっている」という事実です。自由コメントでは、都会とは異なる地元事情の一端が垣間見えました。
- 地元のクライアントは農家なので、県全体の広範囲に広がってます。
- とんでもなく田舎のおじいちゃんおばあちゃんか、エリアを問わないエージェントかの両極端になりがちです
- 浜松の企業は地元愛が強いためか、知ってる人に頼みたい傾向が強いと思います。スズキさんなど大企業は電博さんなどに発注していますが、ご縁がつながると個人にも仕事が舞い込みます
一方で「ライターの仕事に適正価格を支払える企業は、まだまだ首都圏が多い印象」という声も。報酬面では首都圏に軍配が上がるという地方経済の現実もあるようです。
立ち話の営業、自主的にレポート作成…。たくましい仕事獲得術
案件の獲得方法(複数回答可)では、「紹介・口コミ」が68.4%で最多、「直接営業」が50%との回答が集まりました。
それらのコメントを深掘りしてみると、そのきっかけやアプローチは十人十色であるようです。
最初の一手を自ら仕掛ける
最初の一手を自らアプローチし、ご縁をつないだライターたちの声をご紹介します。
- フリーになって間もない頃に地元の名士的な方と知り合い、商工会の副会長もされていたため紹介を受け、商工会の仕事をもらうようになりました。またそこから人脈が増え、直接お話をいただく機会も増えました。
- 最初にライターとして応募した企業さんか、紹介で芋づる式に。
- 興味関心のある分野のイベントに出かける→専業ライターは珍しいので名刺交換の反応がよい→当日のレポートを自主的に書く→興味を持ってくださった会社から商談に呼ばれる
- 取材を終えていたのに企画がなくなって行き場を失った原稿を「そっちで掲載できませんか?」と売り込んで原稿を成仏させました。その後、あたかも「以前からお付き合いありましたよね」といわんばかりの態度で別件の企画も売り込んで、今もお付き合いが続いているクライアントが1社あります。
- 稀に地元の交流会がきっかけでお仕事をいただけることもあります。
イベントレポートを書いてアピールしたり、行き場を失った原稿を逆手に取って新規開拓したりと、自ら仕事を生み出す見事な行動力に驚かされます。
一方で「立ち話からそのまま営業に入ることが多い」と、類まれなコミュニケーション能力を発揮する方も。
何か動けば、世界が開ける。寄せられた声からは、そんな前向きな実感が伝わってきました。
自分の仕事を可視化する
ホームページや記名記事をきっかけに、仕事を広げているライターも少なくありません。
- 記名記事を見て名前で検索いただくケースがあります
- 稀に「X(Twitter)」を見ましたとか「ホームページを見ました」というオファーがあります。また、ライター名鑑経由でオファーしてきたクライアントと3~4年続いています(現在進行形)
- 最近増えたクライアントは、WEBのポートフォリオ、ライター名鑑からの問い合わせが多いように思う。
- 直近だと、ご紹介や公式サイトからの問い合わせです。
- ライター初期に営業して繋がった先からのご紹介と、自分のサイトからご連絡いただき、成り立っています。
- 首都圏からの新規はホームページが多い
ホームページやポートフォリオは、全国各地のクライアントに届くツールとして機能しています。
「約8割が首都圏と取引している」という前述のデータと合わせると、仕事実績の可視化は地方在住ライターにとって、必須の営業インフラといえそうです。
仕事を掛け持ちする人も多数
フリーランスとして働き続ける上で避けて通れないのが「収入の安定」という課題です。
「収入安定のための工夫(複数選択可)」についての設問では、「複数のクライアントを持つ」、「得意ジャンルに特化する」、「ライター以外の仕事も掛け持ち」いう回答が上位に並びました。コメント欄から、その工夫の中身を紐解いてみます。
1.スキルの向上・提供サービスの多角化
- 地元密着を決めたら、営業以外の業務も大事
- 1記事数万円の仕事と、書籍やIR資料など1件数十万円の仕事をミックスしています
- 紹介につながることの意識を持つ。取材とセットになりがちな撮影、動画撮影会込みで、ワンストップ受注を可能にする体制
- SEOの研究をしている。サイト改善業務に特化。試行錯誤の毎日
2. 営業・マーケティング活動
- 公式サイトをつくり、Xやnoteからの導線をつくった。
- 地元に関しては営業先は編集プロダクションですね。
- キャッシュフローが命です。お役に立ちたい(価値提供できる)企業さまに直接提案し、契約することで単価を守りやすく、収入も安定しやすくなると思います。
3. 人脈づくりと信頼関係の維持
- フリーランスで活動する企業広報と人脈を築いて、こまめに情報交換しています。
- ひとつのクライアントにも多数のディレクターさんがいらっしゃるので、横展開で紹介いただけるように納期・レスポンス・柔軟性等メリット出るよう心がけています
- 仕事関係の人に直接会うようになってから、仕事が安定しました。 オンライン面談も面談しないよりずっと有益
4. リスク管理や、クライアントの選定
- 地元の方はITって難しいよねというおじいちゃんおばあちゃんが多く、形のないものにお金をたくさんかける習慣がないので、マネタイズで苦労しています。
- エージェントを通して、エリアを問わない仕事もするようにしています。
- 資本潤沢にありそうな企業を選んでます。丁寧な仕事をしていれば、切られることはないので(報酬はちょっと安いですけど…)。 あと、ライターを始めたばかりのときは、単価の高い仕事を選ぶようにしてました。記事の量産はできないタイプだという自覚があったので、難しくても単価優先で挑むことにしてました。 (当時「高い」とありがたがってた報酬も、今では「ちょっと安いな〜」と思ってます。偉くなったもんです…)
- SEOライター時代から、常にクライアントは5つ以上に分散してリスク回避しています。今は取材が中心ですが、同じく6〜7つの会社とお仕事をさせていただいています。
5. 働き方の工夫(複業・マインドセット・現状の課題)
- 新規開拓のハードルは非常に高いと実感している。
- ライター以外の仕事をしたいと思うが、ライターだけをしていたいという葛藤がある。ライターの仕事ください。
- 収入を安定させるためというより、興味があった大学職員にダメ元で応募しました。面接で偉そうに「ライターと複業ができるなら働きたい」とのたまい、合意を得て入職しました。
印象的だったのは、「ライター以外の仕事を掛け持ち」の回答が上位に入っていたことです。「ライターだけをしていたいという葛藤がある」という気持ちがある反面、現実として兼業を選んでいるライターが少なくないようです。
地方在住で「困った」と感じること
困りごととして挙げられたのは、案件の少なさや地理感覚のズレ、イベントへの参加しにくさなどでした。
案件やクライアント先が少ない
- ネット環境が今ほど発達していなかった頃は、ライター募集のほとんどに「首都圏在住」という条件が付いていて、応募すらできませんでした。
- 首都圏や都市部での取材となると、参入の余地がないと感じています
- 編集者、発注側も年下が増え、クオリティの低下によってメディア全体の質が落ちている。そういった状況の中で、読点の場所にもこだわるような姿勢で取り組むことに虚しさを感じる
- 移住して1年だが仕事が取りづらいです。東京の感覚で仕事してはいけないと思いました。
- 芸能人取材など華やかな仕事はまったくない。「出版社」の仕事はほぼゼロ。基本的にお客様は一般企業。
- ライターにしっかりペイできる文化がまだ未熟で、理解のある企業が少ない。
- 地元企業の仕事は東京と比べて単価が安め。
地理感覚のズレ
- 地理を理解してもらえず、片道一時間以上かかる場所を「県内だし近いから大丈夫ですよね?」と言われること
- 取材ライターの道も志した時期がありましたが、距離があり挫折しました。
- 栃木という中途半端に東京からのアクセスがいい都合上、さくっと来てよみたいな感覚で呼ばれることがある。
オフラインイベントに参加しにくい
- コミュニティの集まりやイベント開催が東京周辺に集中していること。(参加に交通費がかかるため、吟味して行っている)
意外とお金がかかる
- 東京や大阪に住んでたときは、飲食店でもスーパーでも、そのときの気分でたまには高価なところに行ったり、コスパ重視のところに行ったり、豊富な選択肢から選べたけど、地方だとそういう選択肢がないところ。なのに、物価はそれなりに高いし、インフラの料金は確実に都会より高いし、車の維持費も高いし…と、意外と都会よりお金がかかること。
地方在住で「よかった」感じること
逆に地方在住のメリットに関する設問では、「生活コストが安い」「仕事のライバルが少ない」「地域とのつながり」といった回答が目立ちました。
生活コストが安い
- 生活費が安いことと、田舎ならではの繋がりがあること。また、発信のお手伝いをすることで地域貢献に少しは役立っているように感じられ、自己肯定感が上がることでしょうか。
- 首都圏・関西圏への出張取材がプチ旅になるのでラッキーだと感じています。首都圏に住むほど物価も高くなく生活できる点でもよいです。
- わたしは移住した人間なので言い方が難しいですが、体感としては、首都圏よりもその土地の魅力を探る案件や機会が多く、見直すことができるのはよかったと思います。①その地域のニーズに応えていくことが自分の強みになる(例えば浜松なら「製造業の取材ができる」など)②全国メディアでは知りえない「オーガニック」なネタがごろごろ存在する③唯一無二の技術や商品を持つユニークな会社がごろごろ存在する④地元が好きで、ご縁を大切にする文化に助けてもらえる
- 地元の土地勘と情報源を多分に活用できる
- 大型犬を飼ってのびのび散歩したり川や山で遊べること
仕事のライバルが少ない
- 大阪のおばちゃん」なのでキャラが立つのか!?面白がってもらえる。東京出張すると迎撃ランチ(※)にありつける。
※遠方から来訪する友人を出迎えてもてなすランチのこと
- 東北は競争相手が少ないので、大手さんでも有難がられます。たぶん、地方でなければライターとして食っていけてなかったと思います
地域とのつながり
- 近い人以外行けなさそうな現地取材の相談が来ること。(自分しか行く人が居なさそうだと感じたら、見積もりの値段を上げるようにしている)
- 広島のライターとつながりがない。なので一度都市のクライアントさんとつながると、継続発注になりやすいと感じています。また、中四国の拠点にならないかというようなお誘いもいただくことがある。広島市が政令指定都市として、それなりの規模があるからだと思う。
- 地方紙との縁がつながりやすい
約3割のライターが東京行きを検討
「東京に出ようと思ったことはありますか」との問いに対し、65.8%が「考えていない」と回答。一方で、約3割が東京行きを考えていることが分かりました。その背景には、仕事の幅や単価への不満といった理由もありそうです。
地方ならでは?悲哀のあるあるエピソード
地方で働くライターならではの「あるあるエピソード」をご紹介します。
- 専門性があるライター仲間がいないこと。みんなある意味オールラウンド
- 地元密着とか地方創生とか言いたがる
- 鉄道事故に巻き込まれてリスケになることが多い。
- やたらと地域で顔が広くなります。
- Zoomミーティングで方言の微妙なニュアンスが伝わりにくい。
- 同じ県内のライター同士でも、気軽に会えないくらい遠い。茨城がデカいだけ?
- 仕事探し中に「わー!条件のいいフルリモート案件だ!」と思ったら、下の方に書いてある「毎月1回、本社(東京)でのミーティングに必ず参加できる方」みたいな条件を見つけて撃沈する。
- 都内で「高崎から来てるんですか?」と驚かれる
- 東京の仕事の仕方(というか出版社の仕事の仕方)と、地元のノウハウがかけ離れすぎて、首都圏のノウハウはまったく役に立たない。
- ビジホ情報、空港、新幹線など裏技的な知識が増える。
- 車の免許がないとほぼ成り立たない!わたしは移住して35歳を過ぎてから免許を取りました。
- 打ち合わせに東京行くとウキウキする
- 仕事を聞かれたときにライターと答えると、ピンとこないのか困ったような微妙な空気になる。なぜか気を遣われて「あーうん、いいよね!」などとよくわからない褒められ方をされることもある。
- せっかく地方に住んでいるのに東京の仕事をしている。
- 新規クライアントの打ち合わせでも、過去にお仕事したメンバーと再会する。大抵誰かのお知り合い。
- 東京の常識がわからない
- フリーライターはフリーターと同義
- 他業界の人から:ライターって何?どんなもの書いてるの?作家ってこと?と言われる
- 都会在住ライターになったことがないので、自分を客観視できません😆
地方には、地方の生き方がある
今回のアンケート結果から見えたのは、それぞれのやり方で仕事のバランスを取るライターたちの実態です。
単価の安さや物理的な距離といった地方ならではの課題は多いです。しかし、クライアントを分散させたり、ライター以外の仕事と掛け合わせたりして、楽しく地方ライフを過ごすライターも少なくありません。大切なのは、できることを組み合わせるかけ算。
この記事が、これから地方で働くライターたちのヒントになればうれしいです。