仕事の途切れないブックライター・上阪徹さんに聞く、「また頼みたいライターになる方法」

6月25日(木)、ライター研究所では、上阪徹さんを迎えたオンラインイベント「また頼みたいライターになる方法」を開催しました。

上阪さんは、ライターとして30年以上のキャリアを持ち、「ブックライター」という言葉の生みの親としても知られる存在です。これまでに手がけたブックライティングは120冊以上。ブックライターを育成する「上阪塾」は開塾13年目を迎え、門下生は350人を超えます。

そんな上阪さんが語った、長く選ばれ続けるための仕事観と実践法をレポートします。

「自分のために働く」をやめた日

「コピーライターとして勤めていた会社が倒産し、仕方なくフリーランスになったのが始まりです」

華々しい実績を持つ上阪さんですが、キャリアの始まりは意外にも「失業」。しかも「仕方なく」。しかしこれが、人生における大きな転機になりました。

「失業して、プライドもお金も仕事も、何もかも失いました。それでも仕事をお願いしてくれる人がいる。だったら自分のために働くのはやめよう。お願いしてくれる人のために頑張ろうと決めたんです」

自分のために働くのをやめる……!? がつん、と頭を殴られたような感覚に陥りました。

もちろん誰しも、「クライアントのお役に立ちたい」と考えて仕事をしているはずです。一方で、「もっと稼ぎたい」「有名になりたい」「成功したい」……そんな”自分のため”が、心のどこかに同居している人も少なくないのではないでしょうか。少なくとも、筆者はそうです。

「依頼してくれる人のために働く」。言葉にすれば、とてもシンプルです。でも、そのシンプルな考えを30年以上変わらず実践し続けてきた上阪さんだからこそ、これほどの説得力を持つのだろうと感じました。

「なんでもやれる」という専門性

「なんでも書けます、はNG。◯◯ライターを名乗れるような専門性を持ちましょう」

ライター向けの情報を見ていると、そんな言葉をよく目にします。さらには、「〇〇」のなかでも競争相手の少ないブルーオーシャンを狙うのがコツ、なんて話もよく聞きます。

ところが上阪さんは「なんでもやれるのも専門性です」とおっしゃるのです。

コピーライターとしてキャリアをスタートし、現在は年間10~12冊もの書籍を手がける上阪さんですが、「コピーしかやらない」「ブックライティングしかやらない」と仕事を限定することはありませんでした。依頼された仕事の一つひとつに応えていくうちに、自然と仕事の幅が広がっていきました。ブックライティングも「上阪塾」も、そうした積み重ねの延長線上にあったそうです。

何かに特化することも、なんでもできることも、そのどちらも一つの専門性。ただし、いずれの場合も「また頼みたい」と思ってもらうためには、自分をひと言で表す「タグ」が欠かせないと上阪さんは話します。

例えば、「金融ライター」ではなく「難しいことをやさしく書く金融ライター」。ジャンル名だけではなく、自分ならではの強みまで言葉にすることで、発注者にとっての「依頼する理由」が生まれます。「この仕事ならあの人」と思い浮かべてもらえる存在になるために、タグは大きな武器になるのです。

「しっかり」を、しっかりやっていればチャンスは来る

「編集者と飲みに行くことはほとんどない」「業界内に友達もほとんどいない」と語る上阪さん。「飲みニケーション」なんて言葉もありますが、上阪さんの仕事の広がり方は、そうしたイメージとは一線を画しています。

さらには、「本を出させてほしい」と企画を持ち込んだこともほとんどなく、「求めずに、やるべきことをしっかりやっていれば、良いチャンスは自然とやって来ます」とおっしゃるのです。

な、なるほど……! では、その「しっかりやる」とは、具体的に何をどう、「しっかり」やればいいのでしょうか。

■時間厳守

まずは時間を守ること。広告制作会社時代の経験から、原稿が遅れれば、その先のデザインも、印刷も、クライアントへの提出も遅れてしまう。だから、「お金をいただいているのに遅れるのはありえない」という考え方が、今も仕事の土台になっています。

締切を守るのはもちろん、原稿はできるだけ早めに仕上げ、早めに送る。遅れるくらいなら仕事を受けない。それが上阪さんにとっての当たり前です。

しかも、早く送ればそれで万事OKではありません。編集者が忙しい金曜夕方や月曜朝は避けるなど、相手が受け取りやすいタイミングまで考えて納品するという徹底ぶりには、「そこまで考えるのか」と驚かされました。

■100点を目指すためのヒアリング

もう一つは、徹底したヒアリングです。

執筆に取りかかる前に、原稿の完成イメージや目的、誰に読んでほしいのかなど、編集者が考える「100点」を、とことん確認します。相手の100点を知らずに、100点の原稿を書くことはできないからです。

ベテランほど思い込みに注意、というお話も印象的でした。経験を重ねるほど、「これはこういうことだろう」と判断してしまいがちです。

しかし、若い編集者とは面白いと感じるポイントも、読者への見え方も違うかもしれない。だからこそ、細かくすり合わせる。そこまでして初めて、相手にとっての100点に近づいていけるのです。

「また頼みたい」ライターを目指そう

今回のオンラインイベントで語られたのは、上阪さんが積み重ねてきた仕事術のほんの一部です。

時間を守る。相手のニーズを確認する。目の前の仕事にしっかり応える。どれも言葉にすれば当たり前のことですが、その当たり前をどれだけ徹底できるかが、「また頼みたい」と思われるかどうかの分かれ目になるのかもしれません。

もっと詳しく知りたい方は、ぜひ上阪さんの新刊『「また頼みたい」と言われる人がやっていること』を手に取ってみてください。筆者ももちろん購入しました!

名称:「また頼みたい」と言われる人がやっていること
出版社:CEメディアハウス
著者:上坂徹
発売日:2026/6/16
定価:2,090円/税込
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岩崎尚美

岩崎尚美

イワサキナオミ
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