「WWDJAPAN.com」ってどんなメディア!?編集長にインタビュー

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取材日:2020年6月
この記事はライターマガジンVol.1掲載の記事を転載したものです。

 賛否両論が巻き起こる記事こそ価値がある。筆力あるニュース記事の背景にあるのは、記者それぞれが持つオピニオン。思いが人を動かすと語る編集長が行った改革と新たな運用体制とは。元々は米国のファッション紙『WWD』の日本版『WWDJAPAN』『WWDBEAUTY』という2つの紙媒体のWEB版として発足。ファッションとビューティのニュースメディアとして圧倒的な情報量を誇っている。

メディア:WWDJAPAN.com
キャッチコピー:ニュースなファッション&ビューティ
メディア設立:2015年
月間PV:2700万(2023年4月時点)
記事投稿サイクル:20〜30本
ターゲット層:ファッションとビューティに関わる人、関わりたい人全て
社内での位置付け:広告収益、自社ブランディング、新しいユーザーとのエンゲージメント強化
編集部メンバー構成:紙媒体からSNS、セミナーも手掛ける社内の編集部員は25人
運営会社:株式会社INFASパブリケーションズ

紙よりも幅広い層にリーチ

 業界向けの紙媒体2つに対し、WEB版は読者の約7割がエンドユーザー。中でも感度の高い「プロシューマー」からの支持が厚く、プロに必要な情報をタイムリーに届ける一方で、誰もが手軽に楽しめるコンテンツも提供している。

媒体の特性を活かした企画

 最新ニュースはデジタルファーストが基本だが、ファッションショー特集のように網羅性・一覧性が欲しい場合には紙媒体がメインとなり、さらにデジタルで追いかけて販売中の紙媒体の売上に繋げるなどの施策も。「ONE WWD」を掲げ、コンテンツに合わせたリリース方法を柔軟に設計している。

記者の顔が見える記事作り

 記事に添えられたライターのプロフィールには、元バイヤーや老舗業界新聞出身者など極めて専門性の高い経歴が並ぶ。価値ある記事を提供するために、知見に基づく意見を落とし込むことが求められる。現在では編集者が注目トピックと共にメッセージを届けるメルマガも配信。書く人のパーソナリティーが垣間見えることで、記事への反響も大きく変わるのだという。

「WWDJAPAN.com」編集長へインタビュー

編集長 村上 要氏

ニュースメディアとして大事にしていることは

 PV至上主義・速さ主義の記事より、バックグラウンドのある人間が書く独自の記事に価値があると思っています。事実関係だけを羅列した速さ合戦で一番になっても、5分後には別の媒体やSNSが同じ内容をアップしてしまう。編集部員にはなぜそのニュースが起きたのか、腰を据えて背景に踏み込んだ深い記事を書いてほしいと伝えています。メディアを起点として話題・議論になること、ユーザーの感情に訴えかける記事であることを目指しています。

「声を上げるべきだった」元社員の後悔連載ストライプ・ショック

人気アパレル会社元社長のセクハラ騒動を追った連載コラム。関係者の証言を交え、業界全体に警鐘を鳴らした。取材対象や記者の意思が見える時事ニュースはTETが高い。

膨大なコンテンツの運用方法は

 編集部がコンテンツをつくり、その運用についてはデジタルマーケティング部(以下デジマ)に一任していました。デジマが行っていたのはパフォーマンスの計測、フィードバック、SNS、投稿のセット、解析など運用に関する全て。紙媒体から始まったメディアは紙が王様で電子版は力が入らなかったり、紙媒体の都合が優先されたりすることが往々にしてありますが、それによって本当にいいものをユーザーに届けられない事態は避けるべき。是正を考えているタイミングでデジマが発足したので、コンテンツの運用権限をどんどん移していきました。ユーザーの動きを一番知っていて、パフォーマンスの高い投稿時間を見極める精度も圧倒的に優れていました。編集部は純粋にユーザー目線で必要なコンテンツづくりに取り組んできましたが、現在はデジマの業務を移行中。投稿時間やペイウォールの位置を自分で決めたり、記事を拡散するSNSに挑戦したりすることで、記事に対して最後まで責任を持つ意識を育もうとしています。

指標とするTET*について

 TETを意識することで、PVの高い記事と、ユーザーは少数でもじっくり読まれる記事を等しく評価できるようになりました。洋服の「生地」など狭いターゲットを担当する編集者のやる気にも繋がっています。成功しているメディアはPVを重視しない記事づくりに変わってきていると思います。去年の夏ごろからTET重視の記事づくりに大きくシフトチェンジしたことで、PVも900万からすぐに1000万超、現在では2500万以上と大きく伸びました。

これから考えている展開は

 コロナ禍にいち早くスタートして好評だった配信コンテンツはかなり定着しました。他にはTikTokはファッションメディアNo.1。テックをファッション業界に結びつけたコンテンツの提供や、ジャーナリストとして忌憚のない本音を言うポッドキャストも好評です。WEB版はミーハーなエデュケーショナルツール。日経電子版や繊研新聞みたいに「ファッションのことを勉強しなきゃ!」ではなく、「楽しく触れていたらいつのまにか詳しくなってた」というのがぴったりだと思っています。サイトのパフォーマンスは上向きなので、いろいろと挑戦できるようになってきました。

NewsPicks

ピッカーと呼ばれるユーザーの解説コメントが特徴の経済ニュースメディア。ニュースに意見を言いたい、他人の意見を見たいというユーザーの欲求を叶えるコンテンツの作り方・見せ方がすごく上手い、と村上氏。https://newspicks.com/

ライターに伝えたいこと

 書きたいことを書ける環境づくりに、ライターもメディアもまい進すべきと考えています。SEOのために記事の書き方をマニュアル化しているようなメディアは潰れちゃえばいいのに(笑)。今はソーシャルの登場で、色々な人の意見に価値があると体感している時代です。単体では縮小しつつあるファッション業界にとって、業界の外側から来た人の意見はすごく大きい。業界経験者だけでなく、ファッションは知らないけれど挑戦したいことがある、こういうことで貢献できるという方にはぜひお会いしたいです!

*Total Engagement Time=総滞在時間。あらゆるユーザーがその記事に何分滞在したか、質・量の両側面を掛け算することで算出する。

TEXT:小島あゆみ

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