フリーライターとして活動していると、誰もが気になるテーマの一つが「報酬」です。高い案件もあれば驚くほど安い案件もある。SNSでは「1文字0.5円」や「インタビュー1本2万円」といった情報が飛び交いますが、実際のところはどうなのでしょうか。
そこでライター研究所では、33名のライターから「実際に受けた仕事と報酬」を募集し、合計77件の事例を集めました。今回は、そのアンケート結果と公開イベントでの議論を整理し、報酬の実情をご紹介します。
今回のアンケートについて
今回の調査では、ひとりのライターから最大3件まで報酬事例を提出していただき、合計33名から77件のデータが集まりました。ジャンル別に見ると、取材記事が35件と全体の45.5%を占め、他を大きく引き離しています。
また、アンケートは前回同様にSNS(X)での一般公募も行いましたが、回答者の多くはベテランライターが多い「ライター研究所」メンバーでした。
もちろん母数も少ないため、今回の結果は「平均的なライター報酬」を示すものではなく、「こういう人もいる」という個別の実例としてご覧いただければ幸いです。
SEO記事の報酬
- 【0.6円】5,000文字執筆。3,000円+税(医療メディア:複数KY)
- 【1.5円】構成案+3,000文字執筆。5,000円(大手広告メディア複数KY。AI活用あり)
- 【1.5円】構成+画像選定+WordPress入稿+3,000字程度執筆。5,000+税
- 【1.5~2円】3,000文字から5,000文字。5,000円+税
- 【2円】5,000文字執筆。10,000円(クリニックや医療機関:単一KY)
- 【2円】本文執筆のみ1文字2円
- 【2.5円】企画案+4,000文字執筆10,000円+税。
- 【2.5円】記事構成と本文執筆1文字2.5円
- 【3円】キーワード選定と記事構成と本文執筆1文字3円
- 【3円】取材音源をもとにしてインタビューの雰囲気を残した記事作成1文字3円
- 【3円】取材ナシ。文字数は指定される5,000字以上が主
- 【5円】4,000~6,000字、20,000~25,000円+税。企画・構成・電話などでの取材(掲載)交渉・取材あり。長期的なクライアントなので安くやっている。
- 【6円】3,000~5,000文字執筆 20,000~40,000円(医療関連SEO記事)
- 【6円】4,000~5,000字、30,000円(キーワード、構成案指定済み+税。いつも取材記事を請けているお客さんから同じ単価でSEO記事の発注)
SEO記事に関しては、正直なところ価格が違うことくらいしか情報がありません(汗)。一般的な目安として「文字単価1.5円で初心者脱却」「3円前後で中上級者」「5円を超えると上級者」といった意見がありましたが、これは必ずしも実力差を反映するものではなく、営業力やタイミングといった要素に左右される部分も大きいでしょう。
実際には、案件を継続して任される「リピート力」があるほど単価交渉や高単価案件への挑戦も可能になります。ただし収入を安定させるには、記事の単価だけに目を向けるのではなく、作業量が少ない「手離れの良さ」や月額でどれだけの報酬が見込めるかというトータルでの観点が重要です。ボリュームを確保しつつ、高単価案件を組み合わせる戦略が現実的といえるでしょう。
AI活用前提という案件が登場
また、今回驚いたのは、「AIを使うことを前提にした案件」が実際に存在していた点です。クライアント側は、ライターごとに文体のクセや質のばらつきが出るのを防ぐため、あらかじめ自社のレギュレーションやメディアのトンマナを学習させたAIを用意。そのツールにログインして執筆する形が取られています。納品の際には記事本文だけでなく、AIへの指示ログまで提出が求められ、単にAIに書かせた原稿をそのまま提出したライターは契約を打ち切られるケースもあるとのこと。つまり、AIを活用しながらも「編集・修正の手を加えるスキル」が評価されており、今後こうした案件が増える可能性は高いと考えられます。
取材記事① 1万円以下
- 飲食店紹介やイベント紹介記事。取材、撮影、執筆。2,000円。
- 地元雑誌で、地元の新規開店や開業、観光地の取材、1,000字程度執筆。5,000円+交通費。
- 40分程度の取材+1,500字程度の執筆 8,000円+税
- 40~60分ほどのインタビュー取材、5,000~10,000字程度の執筆 8,000円+税
- 構成案+文字起こしから3,000文字執筆+デザイン案提示。5,500円
取材記事でも「1万円以下」の案件は多々あります。(最近もあるのかわかりませんが)情報誌や地域誌では、1ページ1~2万円程度で複数店舗を取材するスタイルもあり、例えばページに6軒掲載されていれば1軒あたりの単価は低くなってしまいます。情報誌主体の編プロにはこういったライトで力業な案件は多いのも確かです。
取材記事② 1~5万円
- エンタメ系インタビュー(Web・雑誌)10,000円+税
- WEBメディアの取材記事。インタビュー取材(アポ取り含む)1,500字程度。10,000円(交通費込み)+税
- 構成案+質問案作成+アポ取り+取材+3,000~5,000文字執筆。15,000円
- 店舗・企業経営者のインタビュー取材、文字数3,000~4,000字、15,000円+税
- ライブレポート(その日のうちにライブレポートを提出)20,000円ほど。
- 企画提案・アポ取り・撮影・執筆・CMS納品・拡散すべて込みで平均3,000文字10,000円~40,000円
- インタビュー記事1本あたり15,000円〜30,000円+税。質問案作成、インタビュー、執筆、修正対応1回まで。文字数は適宜
- 60〜90分の事業者・移住者インタビュー取材と3,000文字執筆。30,000円+税+交通費。
- 60分ほどの取材~執筆でだいたい30,000円+税~
- 40~50分のインタビュー取材と3,000字の執筆 30,000円+税+交通費
- オンラインインタビュー1時間+3,000字執筆 30,000円
- 現地でのインタビュー取材90分と4,000~5,000字の執筆で30,000円ぐらい
- 60分インタビュー取材+30分撮影+2,500文字程度の執筆 平均35,000円+経費
- 60~90分のインタビュー、1,500字から3,000字の執筆 30,000円〜50,000円
- 60分のインタビュー取材と3,000文字の執筆。35,000円+税+交通費
- オンライン取材+記事作成(3,000字程度) 30,000円+税
- イベント出店の飲料メーカータイアップ記事。取材、撮影ディレクション、執筆2,000文字。40,000円+税
- 医療関連取材記事1~1.5時間取材+3,000~5,000文字執筆 40,000~60,000円+税
- ジャンル問わず、オンライン・オフライン問わず、文字数関係なく、取材記事は40,000円+税〜。
- 鼎談や座談会は40,000~50,000円。10,000~15,000字くらい。
レンジも広いですが、今回のアンケートで「一番多かった価格帯」がこちらです。60分前後のインタビュー取材から、質問作成、原稿執筆、修正対応までを含めて1.5万円〜2.5万円といったケースが多く、メディア側から見ても「現実的な水準」といえます。ただし、アポ取りや撮影が含まれると手間が増し、同じ価格帯でも労力に差が出るのが実情です。いずれにせよ「これならペイする」と感じられる人が多いようです。
3万円を超える取材記事は、企業の代表インタビューや専門性の高い医療記事、座談会記事などで多く見られ、1本2~4万円前後が中央値といえそうです。取材・執筆に加え、企画提案や複数人インタビューなど付加的な要素が含まれることも多く、発注側から見ても「この金額出すから頼むよ!」というラインです。ライター側から見ると「このあたりからようやく安定して食べられる」と感じられる水準であり、案件をまとめて受注できれば月収ベースでも大きな柱となり得るゾーンだといえます。
取材記事③ 5万円以上
- 著名人インタビュー。取材、執筆3,500文字。同取材で別媒体の執筆600文字。50,000円+税。インタビュアーの書籍購入代も2,000円まで請求可。
- 対面インタビュー+撮影で2時間程度+4,000字執筆。60,000円
- 当方の企画提案に基づく取材記事。構成案+3,000文字執筆。60,000円+税
- 導入事例記事:施設見学・対面取材1.5時間+3,500字執筆。75,000円+税+交通費
- 個人事業主の方のnote記事:オンライン取材1時間+3,000文字執筆 100,000円+税
- 法人のIR情報に関する取材記事。対面取材。出張費別。5,000文字程度。100,000円/記事
- 賃貸物件がある街の紹介記事、文字数3,000~4,000字+イラスト5点、合計120,000円+税
- クライアントの製品・サービスの導入事例の取材原稿。構成+3,000字原稿作成。120,000円+税
5万円を超える案件になると、いわゆる「ご指名」で依頼されるケースや、専門性の高いジャンルに限られることが多いようです。医療やIR情報、あるいは大手企業の導入事例などはその典型で、知識や経験を備えたライターでなければ対応できません。こうした高額な案件はクライアントとの長期的な信頼関係や、ライター自身の実績や提案力が背景にあることが多いようです。
広告タイアップや企業広報の予算で発注される場合も多く、通常のメディア記事では到達しづらい金額帯です。いわば「広告主の前に出しても恥ずかしくないライター」だけに開かれる領域であり、ここに到達できるかどうかがキャリアの分岐点ともいえるでしょう。
書籍・ブックライティング
- ビジネス書籍の著者を取材して書籍原稿作成。インタビュー2時間×6回、70,000字、200,000円+税
- 著名人エッセイ本の編集協力(計20時間ほどの取材&1冊分の執筆、構成含むこともあり)400,000円+税
- 取材、執筆。100,000字。700,000円+税
- 私家版のゴーストライティング。著者インタビュー+100,000字+修正対応。1冊750,000円+税
書籍の執筆は、報酬の幅が特に大きい分野です。アンケートでは「7万字で20万円」「10万字で70万円」といった例が挙がりました。出版社経由では40万~60万円が標準価格という印象ですが、現在は20万円台という低単価案件も存在。
一方で、著名人のブックライティング案件では70~100万円になることも。今回はありませんでしたが、印税契約がオンされる場合もあります。実力や信頼、出版社の力によって大きく変動する世界です。
広がるジャンル ―シナリオ・動画・SNS
従来の「記事」以外の領域でも仕事は広がっています。正直なところ母数が少なく、統計というほどではありません。あくまでも参考程度ということでお願いします。
動画脚本・漫画原作
- 動画の台本執筆のみ6,000文字。8,000円~12,000円+税
- テレビ番組の構成台本+ナレーション台本 50,000円+税
- YouTubeチャンネル運営、企画、構成作成。1チャンネル50,000円(複数)+税+成果報酬の20%~50%
ショート動画やYouTube向けの脚本は需要が増加しているジャンルです。YouTubeチャンネル運営というビジネスもありました。
SNS運用代行
- X運用代行。5ポスト+10人にリプライ。1回800円
- 月1~2回の撮影同行+原稿作成&写真選定を月8本で月100,000円+税
インスタグラム案件が多い印象です。
広告コピー
- 1コピー+1ボディコピーで50,000円〜。広告内テキスト執筆料にプラスしていただくケースが多いです。
- 商品コピー制作 80,000円〜
- 製品広告コピー。ポスター。100,000円+税
- 製品のネーミングとキャッチコピー作成セット。10案以上提案、数回のリテイクあり。100,000円/製品
見出しやキャッチコピーで5~10万円。ただし複数案の提示や修正対応が多く、期間も長いことから工数は大きいとの指摘もありました。
単価交渉の体験談
①契約不成立
- 作業工程が増えたので、作業分の報酬が欲しいと単価交渉をしました。残念ながら却下で、仕事ごとなくなりました(笑)
- 交渉して5,000円+税アップしたが、依頼が途絶えた
- 本文執筆のみ1文字2円で受けていたクライアント様に、記事構成もできるので単価アップできないかを交渉した。しかし構成などは作成済みだからとやんわりと断られた。しばらくして本文執筆の依頼もなくなったが、単価交渉のせいかはわからない。
- 書籍の執筆に関して見積もりを求められたので700,000円を提示したところ、先方が想定していた数字の3倍以上だったとのことで案件が流れました。
②契約成立
- インボイス開始時に既存のお客さんには1割増しの打診をしました。
- インボイス制度が始まるときに、内税だった報酬を外税に変更できないか交渉し、無事OKいただきました。
- インタビュー記事執筆時、インタビュー先も紹介した際は、コーディネート料を追加依頼した。(+10,000円程度)
- 中3日など短納期の場合は10,000円ほど上乗せ交渉します
- 企画構成を考える、取材先アポ取りをする、図やイラストのラフまで作成など付随する作業も巻き取ることで単価アップの交渉をした。契約してから数ヶ月~1年後など、クライアントや読者からの記事の反応が良い、PVが多いなど、ある程度成果があること前提で
- 対面取材とオンライン取材で取材・執筆において金額にだいぶ差があるクライアントさんがいらっしゃいました。たとえば30,000円が対面取材の場合、オンラインは10,000~15,000円という提示でした。手段が異なるだけで取材をする目的やインタビューの準備をする時間、インタビュー時間、執筆する時間は変わらないと思っていましたので、交渉をさせてもらったことはあります。(拘束費や取材費などロジックがなく、単にオンラインで現地に行かないから安くできるよね、という感じでした)
- 案件ごとに、作業に要する時間から見積もりを提出
③交渉せずにお断り
- 安くても自分らしさやインタビュイーに興味が持てれば引き受けます!高くても「私じゃなくてもいい案件」はお受けしないようにしています。
- 特にありません。単価が低すぎる場合は「他社さんの都合で〇〇円以上でしたらお引き受けしておりまして…」とお断りしています。
- 1文字10円以下はよほどのことがない限り(有名サイトの記名記事など)交渉せずにお断り。単価そのものの交渉というよりは、遠方、拘束時間が長い場合に、交通費を交渉。基本的には、交渉して高くしてもらうというよりは、お断りすると先方が上げてくれます。
「交渉するより新規案件を取った方が効率的」と考える人もいれば、「1文字10円以下は交渉せずお断り」と基準を明確にする人も。報酬交渉は、ライター個々人のスタンスが色濃く表れる領域だといえます。
「平均」ではなく「幅」がわかるアンケートでした
今回のアンケートから見えたのは、ライター報酬に「明確な標準値」は存在しないということです。ジャンル、クライアントの規模、付加価値の有無によって、1本2000円から数十万円まで大きく振れ幅があります。
ライターとして安定した収入を得るには、報酬の「幅」と「条件」を理解し、自分の強みを活かして付加価値を示すことが欠かせません。ライター研究所では今後も定期的にアンケートを実施し、最新の実情を共有していきます。本記事が、これからの活動の参考になれば幸いです。