問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する

ライターには、次々と企画を通す人がいる一方で、なかなか案が浮かばない人もいます。同じ素材を扱っているのに、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?彼らがどのような思考プロセスを経て、ユニークな企画を立てているのか、気になりませんか?

本書『問いの編集力』は、その「思考の柔軟さ」を解明し、視野を広げる方法を教えてくれる一冊です。これは単なるノウハウ集ではなく、「問い」を探究することが、新しい企画を生む鍵であることを示しています。例えば、同じ「お弁当」という言葉も、文脈を変えることでまったく新しい視点が生まれるのです。本書を読み進めるうちに、自分の思考の偏りや視野の狭さに気づき、問いを通じて世界がどれほど広がるかを実感できました。

この本を通じて、思考の枠組みを超え、ライターとしての企画力を飛躍的に向上させるヒントが得られます。問いを育てる力を磨くことで、私たちはより豊かな発想力を身に付け、次々と新しい企画を生み出すライターへの一歩を踏み出せるのです。

安藤昭子(あんどう あきこ)
編集工学研究所・代表取締役社長。出版社で書籍編集や事業開発に従事した後、「イシス編集学校」にて松岡正剛に師事、「編集」の意味を大幅に捉え直す。これがきっかけとなり、2010年に編集工学研究所に入社。2021年に代表取締役社長に就任。企業の人材・組織開発や理念・ヴィジョン設計、教育プログラム開発や図書空間プロデュースなど、多領域にわたる課題解決や価値創造の方法を「編集工学」を用いて開発・支援している。「Hyper-EditingPlatform[AIDA]」プロデューサー、丸善雄松堂株式会社取締役。著書に『才能をひらく編集工学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング)など。 

目次

16の練習問題で視野の狭さに気づく

本書を読んで、私がまず気づかされたのは、自分の思考の浅さでした。日々の仕事に追われる中で、知らず知らずのうちに視野が限られ、固定観念に縛られていたのです。読書を通じて知的な旅に出るような感覚が、久しぶりに私の中に蘇りました。本書には16の練習問題が含まれており、それを試すことで思考がいかに狭まっているかに気づき、愕然としました。

特に印象的だったのは、「問い」とは「未然の可能性に出会うプロセス」という考え方です。探究心を持ち続ければ、遠くに旅をしなくても、日常の中で知的な発見ができるということ。本書は、視野を広げるために、わからないことを無理に理解しようとせず、保留するという新鮮な選択肢も提示してくれます。これにより、思考に余白を持たせ、視点の転換を図ることができるようになるのです。

ライターとして常に新しい企画を生むには、日々のルーチンから抜け出し、未知に目を向けることが大切だと痛感しました。この体験を通じて、私は視野が狭くなっていたことに気づき、もっと自由な発想を持ちたいという強い欲求が芽生えたのです。

企画力を育む「たくさんの私」を考えるエクササイズ

では、企画を次々に生み出すライターたちは、どのようにして柔らかい思考を保ち続けているのでしょうか? 本書はその秘密を解き明かしてくれます。企画を通すためには、ただ単にアイデアを出すのではなく、「誰のために」「どの視点で」という問いを絶えず立て直すことが重要だということです。

特に役立ったのは、「たくさんの私」を考えるエクササイズです。修飾語と名詞を自由に組み合わせることで、自分の中にどれだけ多面的な側面があるかに気づかされました。これまで、自分は一面的な存在だと思い込んでいましたが、実際には多くの役割を持ち、それぞれが異なる視点で企画に反映できるのだと知りました。

さらに、「誰にとって」という視点を変えることで、同じ素材でもまったく異なる企画が生まれることを体験しました。例えば、お弁当を考えるとき、それが母親にとってのものであれば家庭料理としての物語が浮かびますが、子どもにとってであれば学校生活の一部として描けます。このように、視点の転換が発想を広げる鍵なのです。

問いを意識的に立てることで、思考が柔らかくなり、次々と新しいアイデアが生まれてくるという実感を得ました。これは、企画力を高めたいライターにとって非常に有益なアプローチです。

問いを立てるプロセスを追体験できる

「問いのはじまりはどこからくるのか?」この問いは、現代のデジタル時代においてますます重要になっています。AIやデジタル技術が私たちの行動を予測し、選択を代行する時代にあって、自分自身が問いを立て、主体的に行動する力が求められているのです。

本書は、問いを編集する力を通じて、情報の流れを自ら制御する方法を教えてくれます。これは、企画を通すライターにとっても重要なスキルです。情報が氾濫する中で、どのようにして独自の視点を持ち、他人とは違った切り口で企画を提案するのか。それは、問いを編集する力に他なりません。問いを意識的に立て、それを練り直し、広げていくことで、新しい企画の可能性が無限に広がっていくのです。

この本を読むことで、問いを立てるプロセスを追体験でき、ライターとしての視点も変わりました。問いの力がいかに多様であり、それがどれほど発想を豊かにしてくれるのか。これは、すべてのライターが取り組むべき課題であり、挑戦でもあるのです。

『問いの編集力』を通じて、企画を生むための「問い」の大切さと、その広がり方を深く理解することができました。問いを立てること、それは自分の中にある可能性を引き出し、新しい企画を生むための鍵です。この本を読み終えた今、私は問いをもっと意識的に育て、発想を広げていきたいと強く感じています。

ライターとして、問いの力を養い、視点を柔らかく保つこと。それこそが、企画力を飛躍させる秘訣なのです。

問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
著者:安藤昭子
発売日:2024/9/20
定価:2,090円(税込)
この記事を書いた人

価値観や生き方をくみ取り、強みを言語化

さつき うみ

さつき うみ

サツキ ウミ
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