「伝える」立場のライターとして知っておきたい|古舘伊知郎さん直伝『伝えるための準備学』
「どこまで準備をすればよいのか?」と感じたことはありませんか?
とくにライターや話し手として、情報収集だけでは万全でないこともしばしば。本書は、そんな不安に応えてくれる一冊です。
人気アナウンサー古舘伊知郎さんが語る「準備」とは、ただ段取りを整えるだけでなく、相手への理解を深め、自分自身の表現を磨くためのプロセス。読み進めるうちに、伝える力が一段と強くなるような「準備」の本質を学べます。すべての「伝える人」にとって必読の一冊です。
1954年東京生まれ。立教大学卒業後、1977年テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「ワールドプロレスリング」などを担当。鋭敏な語彙センスとボルテージの高さが際立つプロレス実況は「古舘節」と称され、絶大な人気を誇る。1984年、フリーとなり、「古舘プロジェクト」設立。F1などでムーブメントを巻き起こし、「実況=古舘」のイメージを確立する。また、3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、司会者としても異彩を放ち、NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。その後、テレビ朝日「報道ステーション」で12年間キャスターを務め、現在、再び自由な喋り手となる。2019年4月、立教大学経済学部客員教授に就任。ライフワークとして1988年からスタートしたトークライブ「トーキングブルース」は、“一人喋りの最高峰”と称され、厚い支持を集める。
著書に『喋らなければ負けだよ』(青春出版社)、『言葉は凝縮するほど、強くなる』(ワニブックス)、『MC論』(ワニブックス)、『喋り屋いちろう』(集英社)など。
目次
- 伝えるための「準備」とは何か?
- 古舘さんの手書きメモからわかる「準備」が形になる瞬間
- 新しい発想を生む方法は「妄想する準備」
- 準備をしても起こり得る「失敗」が自分を磨く糧になる
- 「準備」の概念が書き換えられる一冊
伝えるための「準備」とは何か?
これまでの「準備」は、あくまで効率化や段取りを整える手段として考えていました。
しかし本書で示される「準備」とは、相手を知り、自己を深く掘り下げる作業。古舘さんは、自身を「凡人」と称しながらも、天才的な人物たちと仕事をしてきた中で、どうすれば「印象に残る人間」になれるのか、苦心して準備を重ねてきました。
彼にとっての準備とは、自分の限界に挑み、個性を磨くためのステップ。単なる事前の下調べにとどまらず、まさに「伝える」ための土台作りなのです。
古舘さんの手書きメモからわかる「準備」が形になる瞬間
とくに印象的だったのは、古舘さん自身が本番前に書き留めていた手書きのメモが、本書で初めて公開されている点です。まるで彼の思考の断片を覗き見ているかのようで、知っているフレーズが登場したときは、感動すら覚えました。
カバーを外してその手書きの表紙を眺めてみると、彼の「準備」へのこだわりが日々の仕事への励ましにも感じられます。
新しい発想を生む方法は「妄想する準備」
古舘さんは「準備」の一環として、情報を収集した後に一度すべてを解放し、自由な発想を取り入れることの重要性を説いています。
妄想することが新しいアイデアを生むための鍵だと聞いて、私は自分がアイデアに行き詰まったとき、無意識にリセットをかけていたことに気づきました。
本書では、この一連のプロセスが意識的に行われることで、アイデアを形にしやすくなることを教えてくれます。
準備をしても起こり得る「失敗」が自分を磨く糧になる
いくら準備をしても、失敗は避けられないことがあります。それでも古舘さんは、失敗は「最悪の見本」と捉え、それが自身を磨く糧となると語ります。
失敗を恐れず、むしろそこから学び、成長していく姿勢は、ライターとしても非常に共感できる部分です。私自身、この記事を書きながら、準備の意味が一段と深まった気がします。
「準備」の概念が書き換えられる一冊
古舘さんが伝える「準備」とは、未来を見据えた生き方そのもの。表現を磨くためのプロセスとして、準備に向き合うことの重要性を強く感じました。
本書を通して、自分の中の「準備」の概念が書き換えられる体験を、ぜひ味わってみてください。
発行:ひろのぶと株式会社
発売元:株式会社順文社
著者:古舘伊知郎
発売日:2024/7/22
定価:2,200円(税込)