東京証券取引所が手掛ける、東証マネ部!ってどんなメディア?

金融系の記事執筆に携わっているライターさんも多いのではないでしょうか。金融系の記事には正確性や信頼性が求められ、時にはファイナンシャルプランナーなどのお金に関する資格が必要になる場合もあります。

そんな中、高い信頼性と正確性で読者から支持されているのが、株式会社東京証券取引所が運営しているメディア「東証マネ部!」です。このメディアは金融に関する知識を広めることを目的に、さまざまなトピックをわかりやすく解説しています。

今回は、本メディアの発起人で、編集長を務める金融リテラシーサポート部の課長、吉田さんにメディアを始めた経緯や運用状況、読者に支持されるための工夫などについてお話を伺いました。

金融リテラシーサポート部 課長/東証マネ部!編集長 吉田貴弘さん

投資家デビューを応援したい

東証マネ部!がどのようなメディアか教えてください。

吉田:東証マネ部!は、日常生活に身近なお金の話から、プロによる資産形成のノウハウ、ETFの活用法などをわかりやすく解説し、資産形成の普及と啓蒙を行うメディアです。

2021年に全国の20〜50代の会社員を対象に行った調査では、462人のうち26.4%が「投資を行っておらず、関心もない」と回答しました。このような方たちに役立つ情報を提供し、投資家デビューを支援することを目標に運営しています。

なぜ東証マネ部!を立ち上げようと思ったのですか。

吉田:投資家の裾野を広げるためです。証券会社に出向していたころ、新規口座獲得をミッションにデジタルマーケティングを担当していました。当時の証券会社は投資に無関心な方々には予算投下しにくい状況でした。あくまでも、既存投資家や投資を始めそうな方の関心をより集めるために、各種マーケティング施策を行っていました。証券会社は営利を目的にしているので、営業効率の観点でそれは当然のことです。

出向を終えて東証に戻った際、東証の特異な立場に気づきました。東証は営利目的のみで経営をしておらず、証券会社ではないので新規口座を獲得する必要もありません。私に課せられたのは、投資に対して無関心な方たちに投資に興味を持っていただき、投資家の裾野を拡大することでした。セミナーやウェビナーを単発で実施しても、どの程度世の中に影響を与えられるかわかりません。じっくりとユーザーに届く蓄積型のコンテンツを提供したいと考え、「東証マネ部!」を立ち上げました。

東証の名に傷をつけないよう、公平性と正確性を

東証の中は自由見学可能。「東証は決して堅苦しいところではなく、もっと身近に感じて欲しい。ぜひ見学に」と吉田さん

どのような体制でメディアを運営していますか

吉田:コンテンツの作成は、①編集プロダクションさんと協力して企画会議をし、ライターさんに執筆を依頼するパターン、②業界関係者が寄稿してくれるパターン、③東証社員が執筆するパターンの3つがあります。

①については、メディア設立時の8年前から協業している2名のライターさんと編集プロダクションの方と制作しています。企画会議をし、テーマ、取材先、その記事で伝えたいことを決め、ライターさんに企画書の作成とアポ取りをお願いして、日程を決め、取材をして原稿作成をしてもらいます。特に幅広い読者にわかりやすく伝えたいコンテンツは、このパターンで制作していますね。

②については、アセットマネジメント(運用会社)からの寄稿が多いです。アセットマネジメントから「自社のホームページに記事を載せても見ているユーザーが少ない」と相談がくることがあり、その記事を寄稿していただいています。自社PRや営業活動はお断りしたうえで、各アセットマネジメントが抱えるマクロ経済に詳しいストラテジストなどから、「今後のアメリカ総選挙どうなるか」のような総論的な記事の寄稿をお願いしています。

③については、「時価総額トップ20銘柄」、「市場の制度改正について」や「高配当ETFランキング」など専門知識を盛り込んで書く必要がある記事を、金融リテラシーサポート部の社員が月に2、3本の頻度で執筆しています。

2023年は全605記事のうち、240記事が②の寄稿記事でした。「東証マネ部!」の趣旨に賛同してくださった会社や団体を「東証マネ部!応援団」と呼んでおり、その中の約30社から定期的に寄稿をいただいています。2024年6月は、1カ月で46記事を公開しました。

記事のテーマ選びはどのように行っていますか

吉田:世の中のトレンドや制度改正をウォッチしながらテーマを選んでいます。2016年のメディア設立当時は、ETFなどを中心に扱っていましたが、1年間運営してみると、それだけでは無関心層には刺さらないことがわかりました。そこで、定額減税や年金など、家計に身近な記事も増やすようになりましたね。身近なところから興味を持ってもらい、ステップバイステップで株式市場に参画してもらえたらと考えています。

日本経済Re Think」のマネックス会長松本氏にインタビューをした記事

2022年から、日本経済や株式市場にフォーカスした特集「日本経済Re Think」を行っています。当時は投資といえば米国株一色で、S&P500に投資しておけば間違いないという風潮がありました。しかし、もっと日本経済にも注目してほしいとの思いから、この特集を始めました。名だたる方々にお話を聞かせていただいた内容は人気があり、冊子にして配布するに至りました。

メディアの創業者としてのこだわりを教えてください

吉田:取材の現場にできる限り立ち会うようにしていることですね。金融の知識のある人間が取材に伺わないと、失礼に当たる場合が多いためです。難しい専門用語をわかりやすくライターさんに伝える役割も担っています。とはいえ、8年以上携わってくれているライターさんたちは、すっかり金融に詳しくなり、最近は私のファシリテーターとしての役割も必要なくなってきました。現場に行くのが好きで、行っている部分もありますね(笑)。

取材の現場に行って実際にお話をすることで相手との関係性を構築できますし、次の施策のヒントが浮かぶこともあります。取材先の方とコミュニケーションを取れる貴重な場だと思います。ライターさんからは「エンドクライアントが直々に取材現場に立ち会うことは珍しいですよ」と言われますが(笑)、楽しいですね。

また、ライターさんの原稿を尊重することも意識しています。法律的な誤認などがあればもちろん修正しますが、ライターさんが書いたままの内容でOKを出す場合が多いです。彼らは読者にとって分かりやすく、理解しやすい記事を作るプロフェッショナルです。難しい内容を読者目線でわかりやすく表現してくれるので、信頼して任せています。

メディアを運営してみて、どのような反響がありますか

アンケートによれば、投資経験者に人気の記事は「世界で最も成功した金融商品!?ETFの魅力とは」、投資未経験者には「年金の「繰上げ受給」しない方がいい人、した方がいい人の条件」が人気です。

世界で最も成功した金融商品!?ETFの魅力とは」より引用

また、ありがたいことに、金融業界の関係者から「東証マネ部!」は注目度が高く、問い合わせがきたり「読んだよ」と報告を日々受け取っており、大変うれしいです。こうした反響を受け、社内でも別部署から企画の持ち込みや提案が増えました。PV数も右肩上がりで伸びており、先月は月間222万PVを達成し、ユーザー数が約140万人という、驚きの結果になりました。

サイトが見やすく、使いやすい印象を受けますがどのような点にこだわっていますか?

吉田:アプリも作っていますし、ユーザーインターフェースには特にこだわっていますね。東証が主催するセミナーやイベントのサイトにもアクセスできるようにし、投資の勉強をフォローする体制を整えています。


また、読者の投資への理解度を考慮し、記事のレベルを分けてタグ付けしています。たとえば、レベル3は「資産形成にチャレンジするための情報・体験談」で、本格的に投資に興味を持った方向けです。タグを選ぶことで、レベル3の記事をまとめて読むことができます。

東証マネ部!サイトにてLevel 3の記事を選ぶと、一覧になって出てくる

さらに、私たちの部署ではETFのガイドブックや、ETFの全銘柄が掲載されているデータブックを制作しています。その情報を検索できる「ETF検索機能」をメディア内に設置しており、金融機関や投資家の方々の評価も上々です。証券会社では限られたETF情報しか提供できていませんが、東証は網羅的に情報を提供しているので、多くの方のお役に立てると思いますね。

東証だから信頼できるよね、と思ってもらえるように

東証が運営するメディアだからこそ、「営業や勧誘をされない」「商品を売りつけられない」という公平性があります。また当サイトには広告も表示されません。記事を読むユーザーからは、これらが大きな安心材料となり、「東証が運営しているんだから、記事の内容は間違いないだろう」と信頼していただけます。そのように感じてくださる方を今後もっと増やしつつ、たくさんの方の投資家デビューを応援していきたいと思います。

メディア:東証マネ部!
キャッチコピー:資産形成を楽しく学ぶ
メディア設立:2016年12月
月間PV:222万PV(2024年6月時点)
記事投稿サイクル:約46本/月(2024年6月時点)
ターゲット層:20〜40代
運営会社:株式会社東京証券取引所
Webサイト:https://money-bu-jpx.com/

TEXT:ゆう

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