理学療法士が監修する、リガクラボってどんなメディア?

医薬品や化粧品、健康食品の効能をうたうには薬機法に基づいて細心の注意を払う必要があり、医療や健康についての記事執筆の難しさや責任の重さを感じているライターさんもいらっしゃるのではないでしょうか。

また、医療や健康について多くの情報が飛び交い、読み手としてもその正確性や信憑性を判断するのが難しくなっています。

そんな中、理学療法士が監修した正確な情報を提供する記事を掲載し、国民の健康に寄与しているのが「リガクラボ」です。サービスの提供元である公益社団法人 日本理学療法士協会の事務局企画部広報企画課課長の西村さんと広報企画課の平林さんにお話を伺いました。

(写真左から)事務局企画部広報企画課 平林さん、西村さん

国民への健康にまつわる正確な情報提供と、理学療法士の認知拡大


リガクラボがどのようなメディアか教えてください。


西村:「リガクラボ」は国民の皆さんへの理学療法にまつわる情報の提供と、理学療法士の認知拡大とブランディングを目的としたメディアです。

理学療法士の視点を活かし、国民の皆さんに健康に役立つ情報をお届けし、病気になる前に予防していただき、いつまでも自分らしく生き生きと生活していただきたいと考えており、その一助になりたいと思っています。また、記事を通して理学療法と理学療法士について具体的に知っていただき、必要な時に理学療法を活用しようと思うきっかけになれば幸いです。協会の公式ホームページはありますが、堅苦しく一般の方からすると少しとっつきにくい印象を受けると思います。そのため、リガクラボではカジュアルな表現でわかりやすく情報を伝えることを意識しています。

理学療法士の都道府県単位の団体として、都道府県理学療法士会(以下、士会)があります。各士会では国民向けの対面イベントを行うことがあるのですが、本会では直接国民の皆さんと関わることがありません。そのため、本会が皆さんに健康について直接訴求できる貴重な役割を果たしているのが、本メディアです。


理学療法士について詳しく教えてください。


西村:理学療法士は「ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職」です。医療機関や介護施設で働いているイメージが強いと思います。

最近は、医療機関や介護施設に加え、介護予防として地域で体操教室を開いたり、企業に雇われて高齢者の方の労働環境の中で体を動かすアドバイスをしたりと、就職先やキャリアの選択肢が増えています。
国民の皆さんのために理学療法士ができることはたくさんありますので、そのことを知っていただき、理学療法士を頼って相談してくださる方が増えると嬉しいです。

専門性の高さと信憑性、わかりやすさに注力


どのような方が企画や執筆に携わっていますか?


平林:本会からは西村、平林、理学療法士2名の計4名で担当し、主に企画出しと編集を行っています。企画会議に参加して「このような記事が作りたい」と要望し、運営委託会社さんに構成や執筆を担当していただく場合や、テーマも原稿もこちらで用意する場合、反対に掲載内容を運営会社さんから提案してもらうこともあります。

運営委託業者さんはライターさんが3名でうち1名は編集も担当。さらに別の3名が企画および全体のディレクション担当です。

記事の信憑性の担保のために、2名の理学療法士が内容に目を通したうえで問題ないものだけを掲載しています。また、理学療法にも運動器、神経など専門分野で研究をしている会員が多くいますので、記事の内容によって、執筆協力をその分野の専門家に依頼することで、専門性や信憑性を担保しています。

メディアのターゲットや現在のアクセス状況について教えてください。


西村:メディアのターゲットは40代女性です。自分や家族の健康に最も敏感な世代であり、その方たちを通して高齢の親御さんやお子さんにまで情報が届くと考えています。ただ、実際の読者層は20代・30代で、健康に興味・関心の強い方や理学療法士を目指している方が多いようです。

また、アクセス状況については、GoogleやYahoo!での自然検索での流入が一番多いです。SEOも意識し、キーワードをタイトルに入れております。ただ、キーワードを意識しすぎて記載したい内容とずれてしまわないよう、内容重視で記事作成しています。また、SNSからの流入も多いです。すでにXのフォロワーは9,000人超いるため、アカウントを伸ばすことより、情報を本当に必要としてくれている方に届けることを目的に運用しています。


メディア運用に際して、気をつけていることを教えてください。


平林:信頼性の高いメディアとして情報を正確に伝えること、また、難しい単語はできるだけ使わないことを意識しています。病気や医療機器の名前を変えることはできませんのでやむを得ず専門用語を出すことはありますが、実際に患者さんに伝えるときのように噛み砕いて表現することが大切だと考えています。

自分に関係がある記事だと思ってもらえるようにタイトルを工夫しています。たとえば、デスクワークをしている際の腰痛予防は産業保健という分野に該当するのですが、一般の方には馴染みがありませんよね。そのため、タイトルの前半に「職業病」という馴染み深いキーワードを入れ、「産業保健」という言葉は最後の方に入れるなど細かいところにも気を配っています。

また記事をUPした日にFacebookとXのアカウントで共有しています。Facebookには意識が高めの理学療法士の方が多いので絵文字などは控え少し堅く発信し、Xでは一般の方が多いので絵文字も入れて見やすく、何が書いてあるのか一目でわかるようにしつつ関連のハッシュタグを載せるようにと、SNSごとの違いを意識した運用をしています。

人を支え、励ます記事にどんな方でもアクセスできる環境を


メディアについて満足している点と困っている点を教えてください。


西村:開設した2019年7月から週に1本ペースでコンスタントに記事をお届けできていることには満足しています。運営していると大変なこともありますが、継続していることに意義を感じます。また、理学療法士の専門性を活かした記事をお届けしてきたという自負もあります。

さらに、以前は紙媒体で理学療法士について知っていただく冊子を発行していましたが、配布先が限られていました。リガクラボならどんな方でもアクセスできるため、幅広い方に情報を届けられているのがメリットだと感じています。

困っているのは、効果測定が難しいことです。私たちは営利団体ではないため、メディアを通した商品の販売や資料請求を目的に運用していません。そのため、現状は記事のプレビュー数をリガクラボの影響の指標としています。読者の実際の行動を確認することはできませんが、理学療法ハンドブックへの導線などを記事によっては設定し、記事を読んだ方が具体的な行動をし、より健康に近づいてもらえるための施策を考えています。

また、医療関係の記事のため、「面白くて新規性がある」だけでは信頼を損なう可能性があります。正確な情報を届ける必要がありますし、「この症状の場合はこうすれば治ります」という短絡的な結論を記載できません。表記の方法や取り扱うデータについて、細心の注意を払う必要があります。さらに、記事掲載時とは制度や現場の状況が変わっていることもありますが、古い情報の記事が残っていることもあり、新しい情報が出てきたら同じテーマで取り上げ直すことも必要になり、「医療・介護」という分野だからこその難しさがあります。

さらに、最近は記事が増えてきたこともあり、トピック・テーマ選びが難しくなってきました。今後はユーザーの方が求める記事にアクセスしやすいよう、カテゴリー分けの再検討などもしなくてはと思っています。

評判のよい記事や、よく読まれている記事を教えてください。

平林:理学療法を受けた方から寄せられた体験談をご紹介する企画の中の「【第1回】私と理学療法~封入体筋炎を発症、筋肉の萎縮に負けず運動に励む日々~」という記事は反響がありました。この記事は封入体筋炎という治療が困難な病気の患者さんが理学療法の体験記を書いてくれたものなのですが、その記事に対して、封入体筋炎の患者の会の方から「とても参考になった」というご連絡をいただいたのです。

というのも、患者の会の方がコミュニティの中で本記事を紹介してくれたらしく、コミュニティに所属している方が記事を読んだ後、感想をつづったメッセージをくださったのです。根本的な治療法がない病気のため、筋力が落ちないためのトレーニング方法を共有したり、どのくらいの運動が適当なのか理学療法士のアドバイスを受けたうえで取り組んだりと皆さん悩みながら試行錯誤されているようで、悩みや苦労した点に共感してくださったようです。その後、記事の執筆者さんと封入体筋炎の患者の会で横のつながりができ、読者の方への貢献が実感できた体験でした。

このように、体験談の記事は多くの方に読まれています。同じ状況にある方や、不安な気持ちになっている患者さんを支え・理解したいと考えるご家族などが読んでくださっているのではと思います。

西村:コロナの時期にメディアでも多く取り上げられた、生活不活発病という状態があります。これは外出自粛で体を動かさなくなることによって、心身機能が衰えていくというものなのですが、それを防ぐための運動の特集を組んで記事にしたところ、アクセスがよかったです。話題のキーワードを取り上げるとアクセスにつながるのだなと実感しました。

他には、「もしバナゲームをやってみた~緩和ケアや終活を考える~」という記事へのアクセスが多いです。理学療法士の専門性を活かした記事ではないのですが、おそらく他に類似の記事が少ないためにアクセスが続いているのだと思います。本会としてこれほど読まれる記事になると考えていなかったため、メディア運用の面白さを感じます。

医療・健康についてうたうなら、読者に寄り添って

西村:最近は医療・健康についても多くの情報が飛び交い、内容の正確性を精査するのが難しくなっています。中には読者の危機感を煽ることで、メディアの利益に繋げている記事もあります。医療・健康の情報を出す時は切実な悩みを抱えている方が多いという前提のうえで、不安を煽ったり過激な表現をすることなく、読者の心に寄り添った記事を届けていただくよう、ライターの皆さんにはお願いしたいです。

メディア:リガクラボ
キャッチコピー:毎日に笑顔をプラスするWEBメディア
メディア設立:2019年7月17日
月間PV:17,000PV
記事投稿サイクル:約1本/週(2024年6月12日時点)
ターゲット層:40代女性
運営会社:公益社団法人 日本理学療法士協会
Webサイト:https://rigakulab.jp

TEXT:ゆう

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