場所を選ばない働き方を実践!「FUKUOKA WORKATION WEEK」について、福岡市に聞いてみた。

福岡市「FUKUOKA WORKATION WEEK」が2023年10月5日~22日に開催決定!10月に世界22カ国・地域、30名以上のデジタルノマドが来福する中で行われるこのワーケーション企画は、福岡市と福岡観光コンベンションビューローの主催。10月5日の「WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡」を手始めに、市内各所でさまざまなワーケーション関連イベントが実施される。フリーライターの方々にもぜひ参加してほしいこのイベントについて、福岡市観光産業課観光産業係長の横山裕一氏に話を聞いた。

福岡市のワーケーションの取り組みについて教えてください。

そもそも福岡市がワーケーションに着目したのは、コロナ禍が影響を及ぼし始めた令和2年度です。この時期、最も悪い時にはホテルの客室稼働率が10%を下回り、街に人が流れ込まなくなりました。この状況を受け、福岡市はワーケーションという新たな形態の観光を模索することになりました。

「ワーケーション」という言葉が初めに流行り始めた頃は、リゾート地でカクテル片手にプールサイドで仕事をするようなイメージが強かったんです(笑)。しかし、実際には移動や仕事環境の制約から現実的ではありません。そこで、都市部でしっかりと仕事をし、その後に観光やアクティビティを楽しむ環境が必要だとの発想から、福岡市は都市型ワーケーションの推進に取り組むことに決めました。

都市型のワーケーションの中でも、福岡のコンパクトシティの特徴を活かすことで、都市部での滞在後、すぐに自然豊かな郊外部にアクセスでき、また仕事が終わった直後に、夜のグルメやエンターテイメントへと繰り出すことも可能です。このような選択肢の豊富さ、多様な滞在環境を提供できる点を捉えて、「福岡型ワーケーション」と称しています。福岡市は、ビジネス観光の街としても知られており、ワーケーションの需要が高いと考えています。

ワーケーション推進のためのアプローチを教えてください。

福岡市が採用したアプローチは、行政主導のもとで民間企業と連携する仕組みを構築するという発想でした。行政だけで推進するのは難しいと考え、観光協会(福岡観光コンベンションビューロー)と協力して行うことになりました。さらに、福岡市がワーケーションの推進パートナーとして市内の企業に呼びかけ、宿泊やコワーキングスペース、交通など、ワーケーションに関連するサービスを提供する企業を「福岡型ワーケーション推進パートナー」として連携することとしました。これらのパートナー企業の情報は福岡市のワーケーション専用サイトで発信され、現在約190社が加入していただいています。

今回のイベントにおいても、福岡市が実際に主催しているのは、「FUKUOKA WORKATION WEEK」という全体の枠組みと、「WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡」のイベント2つだけです。能古島や市内各所のイベントについては別団体が主催しています。「FUKUOKA WORKATION WEEK」関連イベントとして、お互い協力しながら実施している形です。

今回の「FUKUOKA WORKATION WEEK」の概要や狙いを教えてください。

「FUKUOKA WORKATION WEEK」

「FUKUOKA WORKATION WEEK」は、2022年に2日間で開催した「ワーケーションフェス」が前身です。

福岡市は元々ビジネスの中心地である博多駅や天神周辺には人が集まる傾向があることから、「ワーケーションフェス」では、都市部ではなく、あえて海の中道や能古島(のこのしま)など自然に囲まれた場所で開催することとし成功を収めることができました。その成功を受けて、2023年には福岡市内全域を舞台にワーケーションの企画を実施することとしたのです。

特徴は、10月5日に開催される「WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡」を含む、多彩なプログラムが用意されていることです。このイベントの一番の目的は、色々なプログラムに参加いただくことを通じて、福岡での長期滞在を奨励し、観光消費に繋げることです。カンファレンスへの参加者には、その後も福岡市内でのワーケーションイベントに参加してもらい、福岡の魅力を存分に楽しんでもらいたいと考えています。カンファレンス以降も、託児付きのコワーキングスペースや、自身のキャリアを旅行を通じて考えるイベントなど、多彩な選択肢が用意されています。

「WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡」

能古島のイベントはどのような内容でしょうか。

多くの人が集まると予想されているのが10月21日の能古島(のこのしま)でのイベントです。能古島は福岡市西区にある博多湾の離島で、船で10分程度の場所にあります。昨年の成功を受け、今年も多彩な体験を提供予定です。

去年は、平日にも関わらず多くのフリーランスが参加し、船の増便まで行われる盛況ぶりでした。イベント自体は、音楽やフェスの要素に加え、アート、クラフト、ヨガ、サウナ、焚き火、DJブースなど内容は多彩です。能古島の閑散期のビーチを会場に、参加者は自然に囲まれた環境で楽しむことができます。

宿泊は「のこのしまアイランドパーク」が提供するヴィラが利用でき、高速Wi-Fiが整備され、仕事をする環境も整えられています。

このイベントが注目される理由は、多くの人が参加し、自然と人との交流の中で自分自身を見つめ直し、新しい気づきを得る機会としての期待が大きいからではないかと思います。離島という非日常で、いわゆる「CHILL(チル)」な時間を過ごしながら、新しい働き方を模索する場として機能しそうです。

福岡の魅力の一つとして、小旅行が気軽に楽しめるという点は大きなメリットだと思います。福岡市内から1時間程度で離島に行くことができ、離島から見る福岡のまち並みや美しい夜景を是非より多くの人に知ってもらいたいですね。

「WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡」などに海外のデジタルノマドが参加します。彼らが日本に来ることによって、どのようなことが起こると考えていますか。

現在、日本政府はデジタルノマドビザの制度整備に向けて取り組んでおり、今年度中にその制度を導入するということを“骨太の方針”で明記しています。海外ではデジタルノマドの招致競争が激化しており、約40カ国がデジタルノマドビザを提供しています。デジタルノマドは高スキルな人材が多く、ウェブテクノロジーやテック関連分野で働くことが多いです。また、デジタルノマドたちは数カ月から1年にわたる滞在を行い、地域経済に寄与するほか、自身のスキルを共有し地域企業の成長に寄与することも期待されています。福岡はスタートアップ支援に力を入れており、デジタルノマドたちのスキルを地域に還元できる可能性があります。

実は、政府がデジタルノマドビザに関する方針を発表する前から福岡市はデジタルノマド招致の予算を用意していました。なので、国内では福岡市が先駆けになっているのではないかと思います。今回のイベントにはデジタルノマドビザの制度設計に携わったアルゼンチンの専門家や、アジアのデジタルノマドコミュニティを運営するオーナー等が参加予定です。

福岡はアジアの一部として位置し、他のアジアの都市へのアクセスも容易です。また、福岡は働きやすく住みやすい都市として知られており、デジタルノマドたちにとって魅力的な滞在先として世界に広まっていくことを期待しています。

デジタルノマドの来訪を通じて、地場企業や地元コミュニティにどのような影響があると考えていますか。

デジタルノマドたちは国籍にこだわらず、世界中で働き、旅をする人々です。そのため、福岡のスタートアップとの協力、海外展開へのサポート、そして投資といった様々なビジネス関連の動きが期待されています。彼らは滞在するエリアにこだわらない「地球人」のような感覚で、地域社会への貢献やコミュニティづくりにも興味を持つ傾向があります。このイベントが福岡のスタートアップとのネットワーク構築に寄与できればと考えています。

イベントでは、デジタルノマドたちと地域のボランティア活動やコワーキングスペースでの交流など、地域コミュニティとの協力の機会も提供されます。ビジネス機会だけでなく、地元のコミュニティとの交流を通じて、デジタルノマドたちが福岡に愛着を感じる環境が整えられれば、地域経済にプラスの影響が出てくるかと。最終的に、福岡のグローバル度が向上し、地域経済に活気をもたらすことができれば理想的ですね。

他の自治体との連携について教えてください。

福岡市内だけで1週間以上滞在しながらイベントに参加するのは難しいことです。福岡はアジアのゲートウェイであり、九州の玄関口として位置しています。そのため、福岡市単独での取り組みだけでなく、九州全体との連携が重要だと考えています。そのため「FUKUOKA WORKATION WEEK」には周辺の自治体にも参加いただいています。

長崎県壱岐市、熊本県天草市、宮崎県日向市、大分県別府市などがカンファレンスに参加しています。参加自治体は、福岡に訪れた人々を自分たちの自治体に誘客することが大きな目的です。そのための仕掛けを彼らは用意しています。

「FUKUOKA WORKATION WEEK」は福岡だけでなく、九州全体と連携し、異なる魅力を組み合わせてワーケーションを楽しむ形を目指しています。福岡をハブとし、小旅行のような感覚で参加者が異なる地域を巡りながら楽しむことを狙いとしています。

フリーライターのワーケーション参加についてどう考えていますか。

個人的には、時間や場所を選び、柔軟に働けることがフリーライターの魅力だと考えています。今回のイベントは費用が比較的かからず、誰でも参加しやすいと思います。特にワーケーションとの親和性は高いと思います。

ビジネスの観点から言えば、各種イベントやコワーキングでの参加者と交流し、名刺交換をしたりすることで、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります。さらに、カンファレンスや能古島のイベントで取材し、記事を執筆することでメリットが得られるかもしれません。単に楽しむだけでなく、新しい出会いがある場所で積極的に参加し、新しい仕事やコミュニティに参加することで、新しいビジネスを開拓していってほしいですね。

フリーライターやノマドワーカー向けに福岡市からのメッセージをお願いします。

福岡は第三次産業が全業種の9割以上を占める、サービス産業に特化した都市です。エンジニアやライターなどクリエイティブな人材にとって、親和性の高い場所と言えます。こうした人材が活躍しなければ、新たなサービスやビジネスが生まれないため、ノマドワーカーの方々にはぜひ福岡に足を運んでいただき、仕事をしていただきたいと思っています。ワーケーションだけでなく、訪れることで体験できる福岡の魅力に触れていただきたいです。

また、最近は個々の人々が繋がりながら仕事をするDAO(分散型自律組織)で働く人が増えていると実感しています。デジタル技術の普及により、どこでも仕事ができる環境が整いつつあり、これからはノマドワーカー同士が協力し合って新しい社会を築いていく可能性が高まるでしょう。

福岡市は、ノマドワーカーにとって魅力的な場所になるよう努力しています。社会の変化に適応し、新しいビジネスの機会を提供するため、日々情報をキャッチアップし、最先端を走る意識を持っています。福岡市でのワーケーションをぜひ楽しんでほしいですね。

●FUKUOKA WORKATION WEEKの公式ページ
 https://waf-fes.jp/

●WORLD WORKATION カンファレンス in 福岡申し込みページ
 https://world-workation-conference-in-fukuoka.peatix.com/

この記事を書いた人

ICT、医療等の取材SEO執筆に実績多数

浅野文宏

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アサノフミヒロ
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